2006年04月01日

(*)オリジナル

4月1日ネタ

「ああ、どうでもいいな」
黒をぶちまけたビル群の一角、黒い髪と黒いコートが風に揺られていた。
「もう一度だけ聞くぞ。この街でお前はどちらの派閥に付く」
対するは赤い風を纏っていた。二つのソレはお互いにお互いの存在がなければ存在できないかと思えるほどの、光と影。しかしかたや赤き光、かたや全てを飲み込む漆黒。純粋な光と影の対峙ではないことは明確だった。
「何度も言わせるな。俺にとっちゃ派閥なんてどーだっていい」
影が言う。
「お前がどう考えようとこれがここでのルールだ」
光が言う。
ニイ、と影が笑う。だがそれは錯覚だろう。今この瞬間、世界は黒と赤以外は何も見えない。だから笑った、と思えたのは視覚によるものではなく錯覚によるもの。見ることができないのは夜のせい。闇のせい。どれも多分違う。それは圧倒的な存在感を持つ光と影。他のものなんてどうでもよくなるくらい鮮明な存在感。それはこの黒の洪水の中でも失われる、生易しいものなんて比べ物にならないもの、比べてはならないもの。
「そんなもの知るか。ルールは俺が決める」
ああ、光と影は相容れない。…いや、単純に影が何者とも相容れない。なぜなら影は黒いから。全てを含んだ色の終着点、それが黒。
「…お前のような輩は決して少なくない。だというのに、だ――」
光が燃える。赤い赤い光。時に金色に、時に真紅に。それは生き物ならば何であっても、誰であっても本能に刻み付けられた恐怖の始発点、それが赤。
「例外なく俺たちの邪魔をする…っ!」
圧倒的な赤の胎動が、鼓動がこだまする――。黒の洪水が押し戻される。ああ、世界はこんなにも赤かった。
ビルがある、看板が見える、空が、雲が、星が月が――全部真紅へと染められた。
「だからどうしたってんだよ」
もう影ではない。一人の人影。黒い髪、黒いコートは闇のなかにあっての錯覚じゃなく、それは赤い光に満たされてもなお黒い。
「どうせ邪魔をするなら、ここで――」
鋭利な赤が立ち上る。ああ、もうダメだ。見ている人間が絶望するほどの煌き。赤い光を身に纏う一人に人影。
「…上等だ」
そうして取り出されたのは一枚のカード。名刺よりはほんの少し大きい、ただ一枚のカード。
「お前はとっくに認証済みか。どうせやる気だったな」
「……いくぞ!」
赤が踊る。それは風となりあたりを染め上げる。いや、染めるなんて生易しいものじゃない、全てを焼き尽くすかのような赤。それが黒い人影へと――。
「ハッ!」
カードをかざす。そこは何もない虚空。夜の闇に染められ、赤い光に染められる、虚空。

カードが――

「刻め!」

赤と黒の狭間を――

「王の名を!」

奔る――!!

瞬間、黒と赤の柱が上がった。

夜の闇は全てを染め上げる黒。赤き洪水の前には成す術もなく押し戻された黒。しかし今度はそうは行かない。互いに拮抗する力は共に世界の所有権をめぐりぶつかり、夜の空を貫いた。


とゆー話。
B5、1024Pくらい(上下巻計)、一冊5000円。
posted by 五原零司 at 01:28| Comment(0) | Top絵 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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